海外のライダーの間で「Japanese Chopper」という言葉は、ひとつのジャンルとして通じる。日本から来たバイク、という意味ではない。日本人が磨き上げた、ひとつの美学のことだ。
日本は、いじる国だった
戦後の日本は、世界一の自動車大国になった。だが本当に特異だったのは、つくる量ではなく、手に入れた機械を、すぐに自分の手でいじりはじめたことだ。
族車、旧車會、街道レーサー、ローライダー、ハコスカ。日本人は与えられた形をそのまま受け取らなかった。削り、伸ばし、塗り、自分の一台に変えた。作り手の顔が見える機械を、生活の中で育てる。この気質は工芸や刀に通じるもので、乗り物の上にそのまま乗り移った。
そこへアメリカのカスタム文化が入ってくる。バイクから余計なものをすべて削ぎ落とし、フロントを伸ばし、自分だけの一台にする——チョッパーの思想だ。アメリカ生まれの自由な発想と、日本の執拗な手仕事が、80〜90年代に噛み合った。 ジャパニーズチョッパーはその交点で生まれている。
文化が逆流した
毎年12月、横浜のホットロッドカスタムショーには、アメリカのビルダーが「出展するために」海を渡ってくる。文化の流れが逆転した瞬間だった。
その流れは今も続いている。カリフォルニアで開かれるBORN FREEは、いまアメリカで最も見られているカスタムショーのひとつだが、今年は日本から渡ったビルダーと日本人の姿が目立った。 招かれて海を越え、本場で並ぶ。ジャパニーズチョッパーはもう「日本のローカルな解釈」ではない。世界のカスタムシーンの語彙そのものになっている。
「Japanese Chopper」が特定の意味を持つのはそのためだ。日本から来たバイクのことではなく、ひとつの哲学を指している。クロームの量ではなく、抑制と、比率と、手仕事で語る、という。
引き算という美学
日本のものづくりは、足すより引くほうを得意としてきた。余白を残す。装飾を削る。何を置かないかで語る。ZEN——禅の思想は、そのまま金属の上で成立する。
チョッパーづくりはよく瞑想に喩えられる。何日もかけて数ミリのラインを詰め、ステーの角度を決め、要らないものを外していく。足していけば派手にはなる。だが引いていくと、その人が何を美しいと思っているかが、隠しようもなく出る。
リジッドフレームはその極致だ。リアサスペンションを持たない。路面の凹凸がそのまま体に来る。快適さという「機能」を引き算して残るのは、機械と自分と道だけになる。不便を選ぶことでしか手に入らない集中がある。
OCEANBEETLEのチョッパーは何が違うのか
鎌倉のガレージに並ぶ車両は、この文脈のまん中にある。
- すべてスポーツスター。 ベースは’88〜‘99のエボリューション・スポーツスター883。エボリューション世代のスポーツスターはハーレーの中では素直な部類で、扱いやすい。日常的に動かしておける車体だから、毎日貸し出せる。
- リジッドフレーム(ハードテール)。 リアサスペンションを持たない骨格。乗り心地は捨てている。そのかわり、車体が一本の線になる。ジャパニーズチョッパーの背骨にあたる作り方を、そのまま貸し出している。
- 一点物で、作り手がいる。 各車にビルダーとペインターの名前が出ている。展示用ではなく、鍵の付いた実働車だ。
BEETLE RIDERは、この文化の中で育ったブランド OCEANBEETLE のレンタル部門でもある。ビンテージスタイルのヘルメットで名を上げ、埼玉の自社工場でペイントからCNC加工までを手がけてきた。シーンの第一線に立つブランドとのコラボモデルは、発売のたびに即完売している。
つまりここにあるのは、ジャパニーズチョッパーの再現ではない。シーンの内側で組まれた本物に、そのまま乗れるというだけの話だ。
鎌倉で、乗る
チョッパーは走ってはじめて意味を持つ。海沿いの国道134号は、それを知るのに日本でいちばんいい道かもしれない。
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デイライドは¥22,000から。鎌倉駅から徒歩4分。